文/清水美緒 絵/金 斗鉉
発行所/一般社団法人メイクアウィッシュ オブ ジャパン
価格/1,080円
初版発行/2002年6月
<こんな時におすすめ>
✅子どもたちへの絵本の読み聞かせに
✅病院で過ごす子どもたちへの贈り物に
12歳の女の子が制作した絵本。
「へんてこ山のほんわか森」で暮らす動物たちの、とある1日が描かれています。
仲間と挑むこの冒険の物語は、大切なものを思い出させてくれました。
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ー物語あらすじー
へんてこ山のほんわか森に住む犬、うさぎ、さかな、スカンク、カブトムシ、コブラの6匹の動物たち。それぞれワガママだったりいじめっ子だったり気が弱かったり、お互い少しずつ仲が悪い様子です。
ある日、へんてこ山の守り神である長老がふしぎな地図を見つけました。これは宝の地図に違いないと、動物たちは自分が欲しいものを夢見ます。
「みんなそれぞれ欲しいものがあるんじゃな。それならみんなで仲良くその宝を見つける旅に出てみないか」
長老にすすめられ、6匹の冒険が始まるのでした。
ピンチの度にケンカしたり逃げ出したりした動物たちですが、その度に助け合って励まし合って、穏やかな友情が育まれていきます。
とうとう見つけた宝箱。それぞれの得意技を駆使してなんとか開けることができました。
その中にあったものとは――?…
絵本の最後のページは、カブトムシが大好きな蜜をみんなに分け与えて乾杯する様子が描かれています。
宝箱の中身よりも、冒険の中で得た友情こそがかけがえのないものなのだというメッセージが伝わってくる温かい物語でした。
ー子どもたちの夢を叶える「MAKE A WISH」ー
大人も楽しめるこちらの絵本ですが、作者は清水美緒さんという12歳の女の子です。
美緒さんは難病を抱えており、闘病中にこの絵本の制作を進めていました。
一般社団法人メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンがそのサポートをし、出版が叶いました。
「MAKE A WISH(メイク・ア・ウィッシュ)」とはアメリカのアリゾナ州フェニックスに本部を据えるボランティア団体です。現在、42か国に支部を置き、日本支部が「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」となります。
3歳から18歳未満の難病と闘っている子どもたちに、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って、夢を叶えるサポートをしています。
――メイク・ア・ウィッシュの活動は、子どものゆめをかなえて「あげる」のではなく、夢をかなえるのに必要な、さまざまな手配や配慮をしてそのお手伝いをすることです。子どもたち一人ひとりのために、子どもの家族と力を合わせ、夢の実現というかけがえのない体験に向かって進んでいきます。それが明日への生きる力となれば、どんなに素晴らしいことでしょう。(公式HPより)
今回の絵本もこちらから購入申し込みをすることができます。
ー作者・清水美緒さんの思いー
美緒さんは、活発で心優しい子だったそうです。
この物語はそもそも、転校先の養護学校の文化祭で行われる劇のために美緒さんが入院中に執筆したものでした。どんな夢を叶えたいかの打ち合わせを重ねる中で、この物語の絵本化に決めたそうです。
「自分と同じように病気と闘っている日本中の子どもたちに絵本をプレゼントしたい」
絵本制作を通して新しい目標が生まれ、美緒さんに病気と闘う勇気を与えてくれました。
友だちと会えない寂しさや辛い治療に耐えながらも生まれたこの優しい物語。
友だちが大好きな美緒さんだからこそ、その大切さ、尊さが伝わってきます。
また、全国の闘病中の子供たちへの応援メッセージとして、美緒さんオリジナルのしおりも添えられています。
2002年6月に出版を果たしますが、その1日前に美緒さんは天国へ旅立ちました。
完成目前の旅立ちに惜しまれる声もありましたが、それまでの日々こそが、夢に向かって強く生きた時間こそが「宝物」であったのだと、絵本を通じて感じさせられました。
日々生きていると、どうしても心亡くし「大切なもの」を忘れがちです。
そんな時にはぜひこの絵本を開いて、物語から聞こえてくる美緒さんの想いに耳を傾けてはいかがでしょうか。
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私がこの絵本と出会ったのは、ある友人からの紹介がきっかけでした。
その友人は美緒さんの同級生で、今でも御命日に挨拶へ伺うそうです。
私が驚いたのは、美緒さんは私とも同い年にあたり、12歳にして無形である「心の財産」に焦点を当てた物語を描いたということです。
才能あふれ心優しい美緒さんに、絵本を通して出会わせてくれた友人に感謝しております。
また、本記事執筆にあたりこちらの書籍も参考にさせていただきました。
MAKE A WISHで夢をかなえた子供たちの実録です。明日を生きる勇気を教えてくれました。ぜひご覧下さい。
著者/竹林棹 発行所/白泉社 価格/457円+税