2019/06/08

レビュー:「よい子」じゃなくていいんだよ~障害児のきょうだいの育ちと支援

著者/戸田竜也
発行所/新読書社
価格/1,000円+税
初版発行/2005年7月23日


<こんな人におすすめ>
学校、教育関係者の方
きょうだい児をもつ保護者の方
きょうだい(児)について知りたい方



「きょうだい児」の育児についての研究と提案。
子どもたちと交流を重ねてきた筆者が語る、きょうだいの心理。
目に見えない思いが代弁された本書は、子どもたちへの支援の大きなヒントになります。



**********

病児・障がい児を兄弟姉妹に持つ「きょうだい」。
「よい子」を期待されるきょうだいの心理を、筆者の実体験や取材を参考にしながら研究されています。

印象深かったことは「きょうだいは周囲からの期待に敏感で”役に立てる存在でありたい“と常に願っていること。そしてそれは時に自分自身の思いを押さえ込んでまで、無意識に必死になってしまうこと。」

周囲の大人もそんなきょうだいに頼ってしまいがちなので、きょうだいのSOSを見過ごさず、ケアとサポートにまわってあげてほしいという思いも綴られています。


しかしあとがきには、筆者が執筆することに「ためらった理由」がいくつか触れられていました。

「私が書く文章によって、誰かを傷つけてしまうのではないか(本文P93より引用)」

きょうだい支援のことに触れると「親はもう精一杯である。親はそんなに完璧でなければいけないのか」と困惑する保護者も少なくはないとのことです。

確かに保護者の方からしたら、きょうだいの心理がありありと触れられているこの本はプレッシャーに感じる部分もあるかもしれません。
しかし、障害をもつ子も持たない子も健やかに成長していけるひとつの「ヒント」として受け止めることはできます。

そして筆者自身も脳性まひを抱える妹をもつきょうだい。
日常生活の支援への葛藤にも触れられており、異性のきょうだい特有の悩みを分かち合える部分もありました。


また、タイトルにある「フォーラム21」ですが、

フォーラム=みんなで話し合う場所
21=21世紀

「21世紀に向けて、社会に住むわたしたちひとりひとりが問題に向き合い、話し合っていこう」という思いが込められています。

子どもや医療、教育をテーマにシリーズ化されています。
本書が発行されたのは今から10年ほど前。
出版社の担当の方のお話によると、当時は障がい者当事者・その保護者に関する書籍が増えていく半面、そのきょうだいにスポットを当てた書籍はまだ少なく、とても珍しかったとのことです。
そんな中、みんなで話し合おうというメッセージを添えることは、世の中に対する大きな試みだったのではないでしょうか。端々で感じられる筆者の「きょうだい以外の人々」への配慮と、理解を求める丁寧な姿勢がそれを感じさせます。

10年前の本ですが、同じきょうだいの立場として共感できることが多々ありました。
つまり、きょうだいが抱える悩みは時代を超えても未だ尽きてはいないということ。
書籍が増えること=情報が増えること。
そしてそれを知る機会を増やしていくことの大切さを、改めて感じた本でした。



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