2019/06/18

レビュー:いちばん大切なもの


 文/清水美緒  絵/金 斗鉉
発行所/一般社団法人メイクアウィッシュ オブ ジャパン
価格/1,080円
初版発行/2002年6月

<こんな時におすすめ>
✅子どもたちへの絵本の読み聞かせに
✅病院で過ごす子どもたちへの贈り物に


12歳の女の子が制作した絵本。
「へんてこ山のほんわか森」で暮らす動物たちの、とある1日が描かれています。
仲間と挑むこの冒険の物語は、大切なものを思い出させてくれました。

*********

ー物語あらすじー

へんてこ山のほんわか森に住む犬、うさぎ、さかな、スカンク、カブトムシ、コブラの6匹の動物たち。それぞれワガママだったりいじめっ子だったり気が弱かったり、お互い少しずつ仲が悪い様子です。
ある日、へんてこ山の守り神である長老がふしぎな地図を見つけました。これは宝の地図に違いないと、動物たちは自分が欲しいものを夢見ます。
「みんなそれぞれ欲しいものがあるんじゃな。それならみんなで仲良くその宝を見つける旅に出てみないか」
長老にすすめられ、6匹の冒険が始まるのでした。
ピンチの度にケンカしたり逃げ出したりした動物たちですが、その度に助け合って励まし合って、穏やかな友情が育まれていきます。
とうとう見つけた宝箱。それぞれの得意技を駆使してなんとか開けることができました。
その中にあったものとは――?…


絵本の最後のページは、カブトムシが大好きな蜜をみんなに分け与えて乾杯する様子が描かれています。
宝箱の中身よりも、冒険の中で得た友情こそがかけがえのないものなのだというメッセージが伝わってくる温かい物語でした。


ー子どもたちの夢を叶える「MAKE A WISH」ー

大人も楽しめるこちらの絵本ですが、作者は清水美緒さんという12歳の女の子です。
美緒さんは難病を抱えており、闘病中にこの絵本の制作を進めていました。
一般社団法人メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンがそのサポートをし、出版が叶いました。

「MAKE A WISH(メイク・ア・ウィッシュ)」とはアメリカのアリゾナ州フェニックスに本部を据えるボランティア団体です。現在、42か国に支部を置き、日本支部が「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」となります。

3歳から18歳未満の難病と闘っている子どもたちに、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って、夢を叶えるサポートをしています。

――メイク・ア・ウィッシュの活動は、子どものゆめをかなえて「あげる」のではなく、夢をかなえるのに必要な、さまざまな手配や配慮をしてそのお手伝いをすることです。子どもたち一人ひとりのために、子どもの家族と力を合わせ、夢の実現というかけがえのない体験に向かって進んでいきます。それが明日への生きる力となれば、どんなに素晴らしいことでしょう。(公式HPより)

MAKE A WISH 公式HP
http://www.mawj.org/index.html

今回の絵本もこちらから購入申し込みをすることができます。


ー作者・清水美緒さんの思いー

美緒さんは、活発で心優しい子だったそうです。
この物語はそもそも、転校先の養護学校の文化祭で行われる劇のために美緒さんが入院中に執筆したものでした。どんな夢を叶えたいかの打ち合わせを重ねる中で、この物語の絵本化に決めたそうです。

「自分と同じように病気と闘っている日本中の子どもたちに絵本をプレゼントしたい」
絵本制作を通して新しい目標が生まれ、美緒さんに病気と闘う勇気を与えてくれました。

友だちと会えない寂しさや辛い治療に耐えながらも生まれたこの優しい物語。
友だちが大好きな美緒さんだからこそ、その大切さ、尊さが伝わってきます。
また、全国の闘病中の子供たちへの応援メッセージとして、美緒さんオリジナルのしおりも添えられています。

2002年6月に出版を果たしますが、その1日前に美緒さんは天国へ旅立ちました。
完成目前の旅立ちに惜しまれる声もありましたが、それまでの日々こそが、夢に向かって強く生きた時間こそが「宝物」であったのだと、絵本を通じて感じさせられました。

日々生きていると、どうしても心亡くし「大切なもの」を忘れがちです。
そんな時にはぜひこの絵本を開いて、物語から聞こえてくる美緒さんの想いに耳を傾けてはいかがでしょうか。



*********

私がこの絵本と出会ったのは、ある友人からの紹介がきっかけでした。
その友人は美緒さんの同級生で、今でも御命日に挨拶へ伺うそうです。
私が驚いたのは、美緒さんは私とも同い年にあたり、12歳にして無形である「心の財産」に焦点を当てた物語を描いたということです。
才能あふれ心優しい美緒さんに、絵本を通して出会わせてくれた友人に感謝しております。
また、本記事執筆にあたりこちらの書籍も参考にさせていただきました。
MAKE A WISHで夢をかなえた子供たちの実録です。明日を生きる勇気を教えてくれました。ぜひご覧下さい。


著者/竹林棹 発行所/白泉社 価格/457円+税

2019/06/08

レビュー:「よい子」じゃなくていいんだよ~障害児のきょうだいの育ちと支援

著者/戸田竜也
発行所/新読書社
価格/1,000円+税
初版発行/2005年7月23日


<こんな人におすすめ>
学校、教育関係者の方
きょうだい児をもつ保護者の方
きょうだい(児)について知りたい方



「きょうだい児」の育児についての研究と提案。
子どもたちと交流を重ねてきた筆者が語る、きょうだいの心理。
目に見えない思いが代弁された本書は、子どもたちへの支援の大きなヒントになります。



**********

病児・障がい児を兄弟姉妹に持つ「きょうだい」。
「よい子」を期待されるきょうだいの心理を、筆者の実体験や取材を参考にしながら研究されています。

印象深かったことは「きょうだいは周囲からの期待に敏感で”役に立てる存在でありたい“と常に願っていること。そしてそれは時に自分自身の思いを押さえ込んでまで、無意識に必死になってしまうこと。」

周囲の大人もそんなきょうだいに頼ってしまいがちなので、きょうだいのSOSを見過ごさず、ケアとサポートにまわってあげてほしいという思いも綴られています。


しかしあとがきには、筆者が執筆することに「ためらった理由」がいくつか触れられていました。

「私が書く文章によって、誰かを傷つけてしまうのではないか(本文P93より引用)」

きょうだい支援のことに触れると「親はもう精一杯である。親はそんなに完璧でなければいけないのか」と困惑する保護者も少なくはないとのことです。

確かに保護者の方からしたら、きょうだいの心理がありありと触れられているこの本はプレッシャーに感じる部分もあるかもしれません。
しかし、障害をもつ子も持たない子も健やかに成長していけるひとつの「ヒント」として受け止めることはできます。

そして筆者自身も脳性まひを抱える妹をもつきょうだい。
日常生活の支援への葛藤にも触れられており、異性のきょうだい特有の悩みを分かち合える部分もありました。


また、タイトルにある「フォーラム21」ですが、

フォーラム=みんなで話し合う場所
21=21世紀

「21世紀に向けて、社会に住むわたしたちひとりひとりが問題に向き合い、話し合っていこう」という思いが込められています。

子どもや医療、教育をテーマにシリーズ化されています。
本書が発行されたのは今から10年ほど前。
出版社の担当の方のお話によると、当時は障がい者当事者・その保護者に関する書籍が増えていく半面、そのきょうだいにスポットを当てた書籍はまだ少なく、とても珍しかったとのことです。
そんな中、みんなで話し合おうというメッセージを添えることは、世の中に対する大きな試みだったのではないでしょうか。端々で感じられる筆者の「きょうだい以外の人々」への配慮と、理解を求める丁寧な姿勢がそれを感じさせます。

10年前の本ですが、同じきょうだいの立場として共感できることが多々ありました。
つまり、きょうだいが抱える悩みは時代を超えても未だ尽きてはいないということ。
書籍が増えること=情報が増えること。
そしてそれを知る機会を増やしていくことの大切さを、改めて感じた本でした。



2019/06/03

出演のお知らせ:朗読会「宮沢賢治を読む」


ゆたかあすか朗読出演のお知らせです。

宇都宮市在中の「朗読家・青木ひろこ」さんの朗読イベントに出演させていただくことになりました。
題材は宮沢賢治です。


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Le recit presents
青木ひろこのリーディングカフェVol.31
「宮沢賢治を読む」



2019年7月4日(木)
ティールーム パ・ド・ドゥ(宇都宮市吉野2−3−15)
午後2時〜開演
チケット料 2500円(ドリンク付き)



出演
青木ひろこ
ゆたかあすか



演目 
宮沢賢治作品
「紫紺染について」
「まなづるとダァリヤ」
「注文の多い料理店 序」
「虔十公園林」



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——朗読家・朗読講師 青木ひろこさん——


10代の頃から東京都内の映像制作に関わり、劇場での演劇経験を経て「下北沢言語表現研究 西澤ゼミ語り部の会」に参加したことが、朗読の世界へ足を踏み出したきっかけだったそうです。

「西澤ゼミ語り部の会」とは、戦後、NHK専属放送作家・劇作家として活躍した故・西澤實氏が中心となった朗読の会。西澤氏は51年間にわたり放送されたラジオドラマ番組「日曜名作座」(現在の「新日曜名作座」) の脚本を担当。会から輩出された西澤氏の”弟子”の方々は、現在も各地で朗読家やアナウンサーとして活躍されています。

また下北沢は、昔からの劇場やライブハウス、ギャラリーが数多く立ち並び、「アートの発信地」として今も愛され続けている土地です。文化の街の中で磨かれた青木さんの感性が、今の朗読表現の中に息づいていらっしゃいます。

さらに、かつて東京劇団アンサンブルの舞台俳優として活躍し、朗読の指導者として活動している俳優・本多晋氏に師事し、朗読家として数々の舞台を経験されてきました。

現在は朗読講師を務める傍ら、演奏家やダンサー、美術作品やアーティスト、能楽などの古典芸能とのコラボレーションを企画し、枠にとらわれない様々な朗読の形を追求されています。


☆2019/6/15.16  銀座博品館劇場にて開催(青木さんは15日Aステージのみ)























☆2019/11/15 紀尾井小ホールにて開催の「平家女人抄」に出演予定




——宮沢賢治の世界——


(新潮社発行「ポラーノの広場」—「まなづるとダァリア」収録)


宮沢賢治の作品は教育の場やアーティストらの活動など、今や様々な形で目に触れることができます。

青木ーー「宮沢賢治は作家であり、詩人でもあります。彼の作品が持つ独特のリズムが様々なイメージを膨らませ、幅広い世代に親しまれ続けているのではないでしょうか」

農林学校で自然の尊さに触れ、仏教の教えから「真実の幸せ」を探求する賢治の姿勢から、現代を生きる私たちも何かを学び取ろうと求めてやまないのかもしれません。


また、賢治の物語同士は一見別世界のようで、実はどこかで交差しているのではないかと感じられる瞬間があります。
今回の作品たちは詩であったり、人間が主であったり、植物目線であったりするもの様々ですが、どれも地上で賢治が観測した同じ一面なのかもしれません。

青木ーー「賢治は宇宙を駆ける作家。時代に囚われず、現代の私たちにも通ずるものが秘められていますね。」

作品を通して、賢治からのメッセージが皆様の心の琴線にそっと触れる——。
そんなひと時をお過ごしいただければ幸いです。



<チケット・ご予約のお問い合わせ>
「お名前」「ご連絡先」「チケット希望枚数」を、
ゆたかあすかE-mail yutakaasuka0309@gmail.com までお送り下さい。

もしくは、ゆたかあすかのTwitter(@yutakaasuka)のDMまで

<会場地図>
ティールーム パ・ド・ドゥ(宇都宮市吉野2−3−15)













※駐車場の台数には限りがございますので、お乗り合わせかお近くのコインパーキングをご利用下さい。

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