2019/09/11

出版企画のお知らせです。



昨年と今年に発刊となったAmazon電子書籍「#半透明のわたし」「#わたしのクエスト」が、今秋、出版されることになりました!

そして、1冊でも多くの方に届けることを目的に、出版元のソラノイエ様で応援企画を行っていただけることになりました。インターネットで出資金を集めるクラウドファンディングというものを活用致します。


【障がい者支援の新しい取り組み】きょうだい(児)を伝える本を届けたい!!




表紙デザインも刷新予定です。
(ブックデザイン担当者様、ありがとうございます!)

第1弾の「#半透明のわたし」から1年が経ったこと
「紙の本が欲しい」と多くのご意見を寄せていただいたこと
そして、沢山の感想をいただいたこと

これらがきっかけとなりました。本当に本当にありがとうございます。実は、わたし個人にとっても、念願の紙出版になります。

皆様、誠にありがとうごいます。


今後は活動報告を、リンク先のHPにて掲載していきます。
開催時期予定は、9月14日(土)~9月29日頃となります。


福祉に携わる方々、身近に障がいを抱える人がいらっしゃる方、本が好きな方、色んな方に手に取っていただきたい本です。ご興味ありましたら何卒ご協力お願い致します。


また、今回の拙著2作ですが、全文がamazon(Kindle電子書籍)にて販売されております。
どんなものかまず知りたい!という方はこちらからご覧いただけましたら幸いです。

#半透明のわたし
#わたしのクエスト

2019/07/08

レビュー:CD付き プロが教える朗読 心に届く語りのコツ50


監修/葉月のりこ
発行/メイツ出版
価格/1,700円+税
初版/2018年4月
<こんな方におすすめ>
✔️朗読をこれから始める方
✔️朗読の基礎を見直したい方
✔️読書が好きな方



朗読のための基礎が学べる参考書。
発表会当日までの練習や準備など、隅から隅までアドバイスが満載。
声を出すのが楽しくなる――朗読が好きになる一冊です。


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初心者にもやさしい朗読テキスト

「語りのコツ50」とあるように、題材選びから発表会にいたるまでのポイントが50個に凝縮されています。
基本的な発声・活舌の練習法から、鼻濁音・無声音などの少し踏み込んだ内容も優しく丁寧に解説されています。初心者の方向けに要点をおさえつつも、端々にあるコラムによって理解をより深めることができます。
また、経験者の方にとっても、基礎から自分を客観的に見直すことができるアドバイスも満載です。

「これ1冊で、自分で朗読会が開けるかも」とワクワクするぐらい、丁寧で分かりやすい内容でした。


朗読家・葉月のりこ氏による朗読CD

また、付属の朗読CDには、本書内の例文を読み上げた朗読の見本がたくさん収録されています。

音声は、本書を監修された朗読家の葉月のりこ氏。
葉月氏は朗読検定準1級の資格者です。
この資格は、全国規模で開催されている「青空文庫朗読コンテスト」にて認定されます。

朗読検定
https://www.roudokukentei.jp/lp/1807/

数百名が応募する激戦の予選を通過し、本選で三賞のいずれか(金賞、銀賞、銅賞)を受賞しなくてはこの準1級は認定されません。
葉月氏は第1回朗読の輪コンテスト(現青空文庫朗読コンテスト)では個人の部にて準優勝を果たし、第5回の同コンテストでは審査員を務められました。

現在は一般社団法人 日本朗読検定協会認定教室 プチプラージュ主宰として、朗読家・朗読講師としての活動の他、朗読公演のプロデュースや演出、航空会社の運航乗務員教育資料ナレーションも手掛けられています。

朗読家葉月のりこ プチプラージュ
https://haduki48.jimdo.com/


メンタル面もアドバイス

また、本書の特徴として、発声法やイントネーションなどの技術面のほかに、メンタル面のアドバイスが充実している点も演じ手への寄り添いが感じられました。

「”自分の個性を大切にする”とは」
「朗読が心身へ与える効果(期待)」
「発表会当日の共演者・スタッフとのコミュニケーション」

心の中も綺麗に整理することも、良い声を出すことに繋がるのだなと改めて思いました。


まずは「声を出すことが好きになること」「自分らしい朗読を大切にすること」
そんなメッセージが伝わってくるような、易しく優しい一冊です。
朗読にご興味ある方は、ぜひ手に取ってみてください。


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私は今まで朗読者、朗読演出として様々な企画に携わらせていただいてきました。

朗読に限らずこうした芸術分野には答えがなく、自由な発想で作品を生み出せる魅力があります。
自分の表現を追求していけることはやりがいでもありますが、課題でもあります。
良いものを作りたい、上手くなりたいと思えば思うほど、時に行き詰ってしまうこともあるでしょう。

そんな時、この本を開けば「朗読の楽しさ」を思い出せる気がします。
新しい発見もあり、早速試してみたいこともたくさんできました。


朗読をする際のバイブルとして、お手元に一冊いかがでしょうか。


2019/06/18

レビュー:いちばん大切なもの


 文/清水美緒  絵/金 斗鉉
発行所/一般社団法人メイクアウィッシュ オブ ジャパン
価格/1,080円
初版発行/2002年6月

<こんな時におすすめ>
✅子どもたちへの絵本の読み聞かせに
✅病院で過ごす子どもたちへの贈り物に


12歳の女の子が制作した絵本。
「へんてこ山のほんわか森」で暮らす動物たちの、とある1日が描かれています。
仲間と挑むこの冒険の物語は、大切なものを思い出させてくれました。

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ー物語あらすじー

へんてこ山のほんわか森に住む犬、うさぎ、さかな、スカンク、カブトムシ、コブラの6匹の動物たち。それぞれワガママだったりいじめっ子だったり気が弱かったり、お互い少しずつ仲が悪い様子です。
ある日、へんてこ山の守り神である長老がふしぎな地図を見つけました。これは宝の地図に違いないと、動物たちは自分が欲しいものを夢見ます。
「みんなそれぞれ欲しいものがあるんじゃな。それならみんなで仲良くその宝を見つける旅に出てみないか」
長老にすすめられ、6匹の冒険が始まるのでした。
ピンチの度にケンカしたり逃げ出したりした動物たちですが、その度に助け合って励まし合って、穏やかな友情が育まれていきます。
とうとう見つけた宝箱。それぞれの得意技を駆使してなんとか開けることができました。
その中にあったものとは――?…


絵本の最後のページは、カブトムシが大好きな蜜をみんなに分け与えて乾杯する様子が描かれています。
宝箱の中身よりも、冒険の中で得た友情こそがかけがえのないものなのだというメッセージが伝わってくる温かい物語でした。


ー子どもたちの夢を叶える「MAKE A WISH」ー

大人も楽しめるこちらの絵本ですが、作者は清水美緒さんという12歳の女の子です。
美緒さんは難病を抱えており、闘病中にこの絵本の制作を進めていました。
一般社団法人メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンがそのサポートをし、出版が叶いました。

「MAKE A WISH(メイク・ア・ウィッシュ)」とはアメリカのアリゾナ州フェニックスに本部を据えるボランティア団体です。現在、42か国に支部を置き、日本支部が「メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパン」となります。

3歳から18歳未満の難病と闘っている子どもたちに、生きるちからや病気と闘う勇気を持ってもらいたいと願って、夢を叶えるサポートをしています。

――メイク・ア・ウィッシュの活動は、子どものゆめをかなえて「あげる」のではなく、夢をかなえるのに必要な、さまざまな手配や配慮をしてそのお手伝いをすることです。子どもたち一人ひとりのために、子どもの家族と力を合わせ、夢の実現というかけがえのない体験に向かって進んでいきます。それが明日への生きる力となれば、どんなに素晴らしいことでしょう。(公式HPより)

MAKE A WISH 公式HP
http://www.mawj.org/index.html

今回の絵本もこちらから購入申し込みをすることができます。


ー作者・清水美緒さんの思いー

美緒さんは、活発で心優しい子だったそうです。
この物語はそもそも、転校先の養護学校の文化祭で行われる劇のために美緒さんが入院中に執筆したものでした。どんな夢を叶えたいかの打ち合わせを重ねる中で、この物語の絵本化に決めたそうです。

「自分と同じように病気と闘っている日本中の子どもたちに絵本をプレゼントしたい」
絵本制作を通して新しい目標が生まれ、美緒さんに病気と闘う勇気を与えてくれました。

友だちと会えない寂しさや辛い治療に耐えながらも生まれたこの優しい物語。
友だちが大好きな美緒さんだからこそ、その大切さ、尊さが伝わってきます。
また、全国の闘病中の子供たちへの応援メッセージとして、美緒さんオリジナルのしおりも添えられています。

2002年6月に出版を果たしますが、その1日前に美緒さんは天国へ旅立ちました。
完成目前の旅立ちに惜しまれる声もありましたが、それまでの日々こそが、夢に向かって強く生きた時間こそが「宝物」であったのだと、絵本を通じて感じさせられました。

日々生きていると、どうしても心亡くし「大切なもの」を忘れがちです。
そんな時にはぜひこの絵本を開いて、物語から聞こえてくる美緒さんの想いに耳を傾けてはいかがでしょうか。



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私がこの絵本と出会ったのは、ある友人からの紹介がきっかけでした。
その友人は美緒さんの同級生で、今でも御命日に挨拶へ伺うそうです。
私が驚いたのは、美緒さんは私とも同い年にあたり、12歳にして無形である「心の財産」に焦点を当てた物語を描いたということです。
才能あふれ心優しい美緒さんに、絵本を通して出会わせてくれた友人に感謝しております。
また、本記事執筆にあたりこちらの書籍も参考にさせていただきました。
MAKE A WISHで夢をかなえた子供たちの実録です。明日を生きる勇気を教えてくれました。ぜひご覧下さい。


著者/竹林棹 発行所/白泉社 価格/457円+税

2019/06/08

レビュー:「よい子」じゃなくていいんだよ~障害児のきょうだいの育ちと支援

著者/戸田竜也
発行所/新読書社
価格/1,000円+税
初版発行/2005年7月23日


<こんな人におすすめ>
学校、教育関係者の方
きょうだい児をもつ保護者の方
きょうだい(児)について知りたい方



「きょうだい児」の育児についての研究と提案。
子どもたちと交流を重ねてきた筆者が語る、きょうだいの心理。
目に見えない思いが代弁された本書は、子どもたちへの支援の大きなヒントになります。



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病児・障がい児を兄弟姉妹に持つ「きょうだい」。
「よい子」を期待されるきょうだいの心理を、筆者の実体験や取材を参考にしながら研究されています。

印象深かったことは「きょうだいは周囲からの期待に敏感で”役に立てる存在でありたい“と常に願っていること。そしてそれは時に自分自身の思いを押さえ込んでまで、無意識に必死になってしまうこと。」

周囲の大人もそんなきょうだいに頼ってしまいがちなので、きょうだいのSOSを見過ごさず、ケアとサポートにまわってあげてほしいという思いも綴られています。


しかしあとがきには、筆者が執筆することに「ためらった理由」がいくつか触れられていました。

「私が書く文章によって、誰かを傷つけてしまうのではないか(本文P93より引用)」

きょうだい支援のことに触れると「親はもう精一杯である。親はそんなに完璧でなければいけないのか」と困惑する保護者も少なくはないとのことです。

確かに保護者の方からしたら、きょうだいの心理がありありと触れられているこの本はプレッシャーに感じる部分もあるかもしれません。
しかし、障害をもつ子も持たない子も健やかに成長していけるひとつの「ヒント」として受け止めることはできます。

そして筆者自身も脳性まひを抱える妹をもつきょうだい。
日常生活の支援への葛藤にも触れられており、異性のきょうだい特有の悩みを分かち合える部分もありました。


また、タイトルにある「フォーラム21」ですが、

フォーラム=みんなで話し合う場所
21=21世紀

「21世紀に向けて、社会に住むわたしたちひとりひとりが問題に向き合い、話し合っていこう」という思いが込められています。

子どもや医療、教育をテーマにシリーズ化されています。
本書が発行されたのは今から10年ほど前。
出版社の担当の方のお話によると、当時は障がい者当事者・その保護者に関する書籍が増えていく半面、そのきょうだいにスポットを当てた書籍はまだ少なく、とても珍しかったとのことです。
そんな中、みんなで話し合おうというメッセージを添えることは、世の中に対する大きな試みだったのではないでしょうか。端々で感じられる筆者の「きょうだい以外の人々」への配慮と、理解を求める丁寧な姿勢がそれを感じさせます。

10年前の本ですが、同じきょうだいの立場として共感できることが多々ありました。
つまり、きょうだいが抱える悩みは時代を超えても未だ尽きてはいないということ。
書籍が増えること=情報が増えること。
そしてそれを知る機会を増やしていくことの大切さを、改めて感じた本でした。



2019/06/03

出演のお知らせ:朗読会「宮沢賢治を読む」


ゆたかあすか朗読出演のお知らせです。

宇都宮市在中の「朗読家・青木ひろこ」さんの朗読イベントに出演させていただくことになりました。
題材は宮沢賢治です。


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Le recit presents
青木ひろこのリーディングカフェVol.31
「宮沢賢治を読む」



2019年7月4日(木)
ティールーム パ・ド・ドゥ(宇都宮市吉野2−3−15)
午後2時〜開演
チケット料 2500円(ドリンク付き)



出演
青木ひろこ
ゆたかあすか



演目 
宮沢賢治作品
「紫紺染について」
「まなづるとダァリヤ」
「注文の多い料理店 序」
「虔十公園林」



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——朗読家・朗読講師 青木ひろこさん——


10代の頃から東京都内の映像制作に関わり、劇場での演劇経験を経て「下北沢言語表現研究 西澤ゼミ語り部の会」に参加したことが、朗読の世界へ足を踏み出したきっかけだったそうです。

「西澤ゼミ語り部の会」とは、戦後、NHK専属放送作家・劇作家として活躍した故・西澤實氏が中心となった朗読の会。西澤氏は51年間にわたり放送されたラジオドラマ番組「日曜名作座」(現在の「新日曜名作座」) の脚本を担当。会から輩出された西澤氏の”弟子”の方々は、現在も各地で朗読家やアナウンサーとして活躍されています。

また下北沢は、昔からの劇場やライブハウス、ギャラリーが数多く立ち並び、「アートの発信地」として今も愛され続けている土地です。文化の街の中で磨かれた青木さんの感性が、今の朗読表現の中に息づいていらっしゃいます。

さらに、かつて東京劇団アンサンブルの舞台俳優として活躍し、朗読の指導者として活動している俳優・本多晋氏に師事し、朗読家として数々の舞台を経験されてきました。

現在は朗読講師を務める傍ら、演奏家やダンサー、美術作品やアーティスト、能楽などの古典芸能とのコラボレーションを企画し、枠にとらわれない様々な朗読の形を追求されています。


☆2019/6/15.16  銀座博品館劇場にて開催(青木さんは15日Aステージのみ)























☆2019/11/15 紀尾井小ホールにて開催の「平家女人抄」に出演予定




——宮沢賢治の世界——


(新潮社発行「ポラーノの広場」—「まなづるとダァリア」収録)


宮沢賢治の作品は教育の場やアーティストらの活動など、今や様々な形で目に触れることができます。

青木ーー「宮沢賢治は作家であり、詩人でもあります。彼の作品が持つ独特のリズムが様々なイメージを膨らませ、幅広い世代に親しまれ続けているのではないでしょうか」

農林学校で自然の尊さに触れ、仏教の教えから「真実の幸せ」を探求する賢治の姿勢から、現代を生きる私たちも何かを学び取ろうと求めてやまないのかもしれません。


また、賢治の物語同士は一見別世界のようで、実はどこかで交差しているのではないかと感じられる瞬間があります。
今回の作品たちは詩であったり、人間が主であったり、植物目線であったりするもの様々ですが、どれも地上で賢治が観測した同じ一面なのかもしれません。

青木ーー「賢治は宇宙を駆ける作家。時代に囚われず、現代の私たちにも通ずるものが秘められていますね。」

作品を通して、賢治からのメッセージが皆様の心の琴線にそっと触れる——。
そんなひと時をお過ごしいただければ幸いです。



<チケット・ご予約のお問い合わせ>
「お名前」「ご連絡先」「チケット希望枚数」を、
ゆたかあすかE-mail yutakaasuka0309@gmail.com までお送り下さい。

もしくは、ゆたかあすかのTwitter(@yutakaasuka)のDMまで

<会場地図>
ティールーム パ・ド・ドゥ(宇都宮市吉野2−3−15)













※駐車場の台数には限りがございますので、お乗り合わせかお近くのコインパーキングをご利用下さい。

2019/05/02

レビュー:朗読絵本「skybutterfly~殻の向こう~」


[絵本] 絵/umi.doodle 物語/瑠璃
[朗読CD] 語り/須賀由美子 音楽/安生正人 演出/ゆたかあすか
発行所/ソラノイエ
価格/3,000円+税



誰も知らない難病"表皮水疱症"から生まれた「朗読絵本」。

小さな身体で、大きな世界を一生懸命に生きるイモムシの姉妹。
2人が蝶となり、空へ羽ばたくまでの物語です。

ひとりぼっちじゃ生きられない。
「殻」の向こうにある世界へ踏み出す勇気を、教えてくれました。



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今回は、私も朗読演出として携わった朗読CD付き絵本「skybutterfly~殻の向こう~」をご紹介します。
ですが絵本の紹介の前に――絵本の表紙となったこの「絵画」には、とても大切な想いが込められています。
その制作の背景や製作者の想いも併せて、ご紹介させていただきます。

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希少難病「表皮水疱症」とは
皮膚をつくるタンパク質の生成に問題が生じ、肌に摩擦がおきると、火傷のような水ぶくれやただれができる等の症状がでる病気です。
症状には個人差があり、重度のものだと悪性腫瘍などの合併症を引き起こす場合もあります。

患者数は国内で2千人程と推定されています。
「近い将来、治る見込みの高い難病」といわれていますが、現在は水疱をすばやく処置する等の対症療法のみで、病気を完全に治す治療法はありません。
その時々の症状を軽減する対症療法が中心で、生涯にわたり繰り返していく必要があります。
遺伝性の高いものでもあるため、1日でも早い治療法の確立が急がれています。

また、最新の事例として、栄養障害型患者への骨髄移植を行い皮疹の改善を認めたという報告がアメリカや欧州で報告されています。
日本でも、大阪大学の玉井克人教授のもと、骨髄間葉系幹細胞移植の治験がすでに行われており、臨床への期待が高まっています。(下記リンク先より引用)

治療法・研究についての詳細はこちら
(表皮水疱症友の会DebRA Japan HPより)


絵画のはじまり
画家として活動しているumi.doodle(うみ)さん。
彼女のお姉さんは「先天性表皮水泡症」という難病を抱えています。

「表皮水泡症友の会の、会のロゴを作れないか」というお姉さんの相談を受け制作されたのが、絵本の表紙となった絵画「Sky Butterfly-to DEBRA-」


表皮水疱症は、海外では「繊細」というイメージから「バタフライ・チルドレン=触ると壊れる子供たち」とも呼ばれています。
本来の蝶々のイメージに目を向けて欲しいという思いから、「蝶を探してふと見上げたら、空の虹を見付けた女性」の絵となりました。

カレンダーやポストカードとしても販売され、売り上げの一部を会に寄付するというチャリティ活動としても展開されました。
(2017.10.22 下野新聞より)


絵本制作にあたって
今回を機に、さらに一人でも多くの方に「表皮水疱症」を知ってほしい。
umi.doodleさんは、自分が作家として出来ることは何かを考え始めます。

そうして思い悩んでいたところ、友人であるアナウンサーの須賀由美子さんから「この絵画を表紙にした絵本はどうだろう」という提案がありました。

社会へより広く発信させる手段として、絵本の制作資金はクラウドファンディングで集めることを決意。
ケルティックハープ奏者の安生正人さんなどアーティストが集い、一つの「朗読CD付き絵本」が生まれました。


出版記念イベント開催
クラウドファンディングにて目標達成し、書籍化が決定。
2018年6月に感謝の想いを込めて出版記念イベントを開催しました。
支援者の皆様への配本やご挨拶、友の会DebRA Japanの代表・宮本恵子様からのメッセージをご紹介させて頂き、心温かな時間を過ごすことができました。

現在、支援者の皆様の他にも様々な方々のもとに届き、ご愛読いただいています。



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本作へのレビュー

物語の展開は同じですが、絵本本文と朗読CDに収録された台本の構成は全く異なるものです。
「目で見る物語」と「耳で聞く物語」の違いから、それぞれ違うアプローチでお話が仕立てられています。
絵本用に上がってくる原稿には、私自身もいち読者として楽しみにしておりました。
今回は絵本としての物語について、客観的に感想を述べさせていただきます。


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物語の主人公は、小さなイモムシの姉妹。

元気で明るい妹と、優しくて温かな存在のお姉さん。
2人はいつも一緒でした。
ある雨上がりの日。葉から落ちた大きな雨粒がお姉さんにぶつかってしまいます。
水たまりに落ちてしまったお姉さんは、深い深い悲しみに沈んでしまいました。

いつも助けてくれたお姉さんに、かける言葉がみつからない妹。
2人の心の距離はだんだんと離れていき、冬眠を迎えてしまいます・・・




ラストシーンでは殻を破り、自分の思いで外の世界へと羽ばたいていく姉妹が描かれていますが、
そこに至るまでの心象風景の描写が、絵・文ともに繊細で、リアルな切なさが伝わってきました。

落ち込んだ姉へかける言葉が見つからない妹。
自分の「殻」に閉じこもる妹。
深い悲しみの中でお姉さんが目にした、悲しいほどに綺麗な空。

これらの描写には、生きていくことの難しさや、立ちはだかる障壁への悔しさ、自分への虚しさが滲み出ています。


大切な人が落ち込んだ時、自分には何ができるだろう
自分が立ち直れなくなってしまったとき、何が自分を動かすのだろう
自分にとって大切なことは何なのだろう


大人でさえも悩ましいこれらのことですが、
物語の妹は、「大切なこと」を思い出すことで「殻」を破りお姉さんと再会できます。



辛いシーンもある物語ですが、
他者と手を繋ぐこと、共に生きていくことの尊さが根底にあります。


「ひとりぼっちでは生きていけない」

「あなたはひとりじゃないんだよ」


作品帯に書かれている「未完成な大人と未来ある子どもたちへのエール」というフレーズ。

今、物語の全てを理解することが難しかったとしても、
いずれ「人生の困難」に直面した時には、そっと本棚から引っ張り出して、ページをめくってみてほしい。
どうしようもなく困ってしまった時に、そっと寄り添える存在であってほしい。

そんな可能性を、この絵本に感じました。

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私自身も、このプロジェクトを通して「作品作り」という面以外にも多くのことを学ばせていただきました。

人生の中で、
行き詰ったときの苦しさ、転んだときの情けなさ、立ち上がることへの恐怖。
前進したいと望みながら、要らないことばかり考えてしまう。
時には気づかないふりをして、誰かの許容に甘えて「惰性」で進んでしまうことも。

しかし、「ひとりではない」という言葉は決して他力本願であれば良いわけではなく、
そこには必ず自分の意志も灯らないと、相手とは反響しあえないんですよね。

安心して、勇気をもって、飛び込んで。

物語の中の妹は、そういう意味でお姉さんと分かち合えたのではないでしょうか。


常に、自分の中の大切なことを忘れないように、見失わないように。


この絵本を手にした人には、
周りの人と尊重しあえる絆が育まれることを願っております。


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<参考>
なお、より詳細な制作の経緯やメンバーの想いは、こちらのページをご覧ください。
「クラウドファンディング kibidango(きびだんご)」
skybutterflyプロジェクトページ

表皮水泡症友の会「DebRA Japan」のHPはこちら。
http://debra-japan.com/

2019/04/09

電子書籍第2弾「#わたしのクエスト」発表

 
この度執筆させて頂いたノンフィクション「#わたしのクエスト」
電子書籍としてソラノイエ出版様から発表されました。








障がい・病児の兄弟姉妹「きょうだい児」
大人においては「きょうだい」とも言われます。



「障がいを抱える兄弟姉妹について、相談できる相手がいない」
「きょうだい(児)である自分は結婚できるのだろうか?」
「もしも自分の子どもが障がいを抱えて生まれてきたら?」
「親亡きあと、自分はどうすればいい?」
「夢を追って家を出たのは、悪いこと?」


きょうだい児が抱える葛藤は、子どもから大人まで、年代ごとに形を変えていきます。


重度の「発達障がい」を抱える姉と妹をもつ私も、未来に思い悩むひとりです。

夫との将来の為、いつか宿る我が子の為、自分はどうすればよいのか。

その答えを見つけるべく、今回は様々な立場の方々へご協力いただき、大切な気持ちをお話しいただきました。


 
本書が「きょうだい(児)」のことを考えるきっかけとなることを願っております。
 




2019/04/08

レビュー:障害のある人とそのきょうだいの物語 青年期のホンネ


編著/近藤直子、田倉さやか、日本福祉大学きょうだいの会
発行所/株式会社クリエイツかもがわ 
価格/1000円+税

<こんな人におすすめ>
きょうだい(児)について知りたい方
福祉関連にご興味お持ちの方




学生であるきょうだい(児)の”文集”
 
日本福祉大学のゼミ生が結成した「きょうだいの話を聞く会」
参加者のほとんどが障害を抱える兄弟姉妹を持つ“きょうだい”です。
 
会立ち上げの経緯や、集った青年たちの「きょうだい児」としての本音が寄せられています。



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兄弟姉妹に対する思いは様々で、愛情たっぷりのエピソードを紹介する学生もいれば、昔は憎しみすら抱いていたと赤裸々な思いを語る学生もいました。

中でも沼野純子さん執筆のエピソード「兄の存在」には、きょうだい特有の“孤独”との葛藤が包み隠さず描かれていることに衝撃を受けます。


地元の同級生たちからの揶揄によるストレスで、自閉症の兄へ暴力を振るってしまっていたこと。
それに対する両親からの叱責により居場所を失っていく孤独感。

経験したことがなくても、読み手の心が詰まるような“告白本”のようでした。

ただ、そんな状況から脱却する為に、あえて地元から離れた高校を受験し自ら環境をリセットした勇気や、

孤独な経験を生かし同じ境遇の子達へ手を差し伸べるべく“特別支援学校の教員”という夢を見つけたこと、

更には親との関係も修復し、自閉症の兄の苦労を改めて知り涙したことなど、人として成長していく沼尾さんの心の変化に感動しました。



きょうだい児の”葛藤”や”希望”が込められた1冊です。
エピソードのバリエーションの豊かさから、「きょうだい(児)」というテーマを考える際の未来に残したいと思える書籍でした。

2019/04/01

電子書籍第2弾「#わたしのクエスト」2019/4/9 発表



この度、ソラノイエ出版様より

電子書籍第2弾として、きょうだい児である自身のノンフィクション「#わたしのクエスト」を発表致します。






/ゆたかあすか 出版/ソラノイエ

201949日(火)~amazonにて販売開始


「障がい」を抱えた家族はどう向き合えば良いか
きょうだい児である友人、病児の親、福祉施設職員など、様々な人達の本音トーク。
「自分の人生の主人公は、自分」
その答えに辿り着くまでの、きょうだい児の冒険の記録

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障がい・病児の兄弟姉妹「きょうだい児」。大人においては「きょうだい」とも言われます。


「障がいを抱える兄弟姉妹について、相談できる相手がいない」

「きょうだい(児)である自分は結婚できるのだろうか?」

「もしも自分の子どもが障がいを抱えて生まれてきたら?」

「親亡きあと、自分はどうすればいい?」

「夢を追って家を出たのは、悪いこと?」


きょうだい児が抱える葛藤は、子どもから大人まで、年代ごとに形を変えていきます。







重度の「発達障がい」を抱える姉と妹をもつ私も、未来に思い悩むひとりです。


夫との将来の為、いつか宿る我が子の為、自分はどうすればよいのか。

その答えを見つけるべく、今回は様々な立場の方々へご協力いただき、大切な気持ちをお話しいただきました。

本書が「きょうだい(児)」のことを考えるきっかけとなることを願っております。

2019/03/24

レビュー:人生バイプレイヤー きょうだい児を生きる




著者/中澤晴野 発行所/株式会社文芸社 価格/1,000円+税



<こんな人におすすめ>
きょうだい児としての悩みを共有したい
障がい者家族を支援したい、している


 
きょうだい児としての「告発本」
 
「障がい者本人も苦しんでいる」「親は十分努力している」
その事実の裏側にある「きょうだい児の葛藤」が吐露されていました。
 
支援の手からこぼれ落ちてしまう「きょうだい(児)」の存在を、改めて思い出させてくれました。


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筆者は現在、ダウン症を抱える弟「Aちゃん」と両親とともに暮らしています。
Aちゃんが生まれてから現在に至るまでの生活が、筆者視点で記されています。

両親との確執、学校でのいじめ、本人に発症した病。
さまざまな問題に見舞われながら、筆者自身の人生が「透明な鎖」でがんじがらめに縛られていく様子が伝わってきました。

幼少期から刷り込まれてきた「バイプレイヤー=脇役」気質。
その根源が、筆者の経験を通して丁寧に触れられています。

また、「いろいろなきょうだい児」(本書P83より)と題して、家庭環境の違いから生じるきょうだい(児)の多様性も認めていらっしゃるので、公平な目で読み進めることができました。


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まずは、きょうだい児の葛藤をよくぞここまでストレートに発信してくださった、と敬意を表します。


私も筆者と同じく、障がい(知的障がい)を抱える姉と妹を持つ「きょうだい(児)」です。
共感と納得ができる部分が多々あり、筆者が受けた理不尽な出来事の連続には思わず涙しそうになりました。
それは悲しみの涙ではなく、わたしの中にもあるきょうだい(児)特有の「寂しさ」が胸を打ったのです。


筆者は本書を「告発本」と表しています。
確かに、家族への仄暗い感情や、家庭内の不和を赤裸々に語る点ではそのように言えるかもしれません。


ですが、筆者は本書で
「この告発が誰かにとっての受容と共感となってくれることを願っている。(本書)P83 より)」
と話しています。


「きょうだい児」という言葉を私が初めて知ったのは、SNSでした。
「#(ハッシュタグ)きょうだい児」には、様々な環境を過ごすきょうだいたちの「リアルな声」が刻まれています。

きょうだい児は親と違い、同じ境遇の仲間をみつける手段が子供のころには持てません。
「ネガティブ」な感情、またそれを抱えることへの「罪悪感」。それすらも共有できる場はまだまだ少ないです。
同じ考えを持っている仲間と出会えることは、たとえ顔が見えないネット上であっても心強いものです。

本書はそのネットの世界から飛び出して、「出版」という、より大きな声で発信された勇気の塊だと感じました。


きょうだいとしての悩み、葛藤、不安。
ネガティブな気持ちは抱えてはいけないものではない。
むしろそれに気づかないふりをして、自分を殺してしまうことの方が、私はよほど恐ろしいものに思えます。
もし人知れず、きょうだいとしての境遇にもやもやした気持ちや心の傷を抱えている方がいらっしゃったら、
本書をご覧いただいてその気持ちが共有できれば、他者を知る=自己を顧みる機会になるのではないかと思います。



また、障がい者家族を支援されている方、これからされる方。

きょうだいへの理解なくして、一家族への支援は成り立ちません。
すべてのきょうだいが本書と同じ経験を経ているわけではありませんが、ぜひ知ってほしい。
そんな私の個人的な感想より、<こんな人におすすめ>に入れさせていただきました。



最後に

他人事のような言葉しか送れないことが口惜しいですが、

今もなお苦しい日々と戦う筆者の人生に、すこしでも光が射すことを願うばかりです。

2019/03/22

『米国きょうだい支援プロジェクト ドナルド・マイヤー氏 講演会 in OSAKA』 感想


きょうだい支援の世界的先駆者ドナルド・マイヤー氏の、おそらく日本で最後の講演会。

きょうだい(児)について研究されている方は、誰もがその名前を目にしてきたことでしょう。

特別なニーズのある子どものきょうだいのためのワークショップ「Sibshop」(シブショップ)の開発者です。


定員300名の客席はほぼ満席。
参加者はきょうだい(児)本人の方、障がい・病児をもつ親御さん、実際にきょうだい支援をされている方、また障がい者家族ではない方など様々。
TV局の取材も入り、メディアからも注目されている様子でした。

今回は「きょうだい支援の原点とこれから」と題し、 きょうだい支援の必要性や、アメリカでのきょうだい支援の歴史などお話しいただきました。

本記事ではそのごく一部のみ、ご覧いただいている皆様と共有させていただきます。
(※一部抜粋であり、講演会に参加されていない方には解釈しづらい点があるかもしれません。)


**********

――アメリカのきょうだい支援

アメリカでのきょうだい支援の啓発活動はおよそ100年前まで遡る。

その長い歴史の中、 故ジョン・F・ケネディ米大統領の実妹・ローズマリー・ケネディが知的障がいを患っていたのは有名な話だ。
日本にも普及したアメリカ発祥の「スペシャルオリンピックス(知的発達障害のある人の自立や社会参加を目的としたスポーツ組織)」は、そもそもケネディの別の妹・ユーニス・ケネディ・シュライバーが知的発達障害のある人たちを招いて、自宅でデイキャンプを行ったのが始まりだった。
ケネディの他の兄弟姉妹たちには「悪名高い障がい者収容施設の廃止」「障がい者のための制度の改善」などの功績がある。
ケネディ兄弟姉妹がアメリカの福祉分野に与えた影響は大きく、それがのちのきょうだい支援にも繋がっている。

他にも10代のための「シブティーン」
20代のきょうだいのための「シブトゥウェンティ」
国が支援する「シブリングリーダーシップネットワーク」など、
様々な支援団体がその活動の幅を広げてきた。
アメリカではきょうだい支援の充実に向けて、国会議員へ積極的なアプローチも続けている。

マイヤー氏の「Sibshop(シブショップ)」は、もともとは「障がい・病児をもつ父親の会」として、同志と立ち上げた組織がきっかけであった。
様々な家族とふれあい情報共有することで、障がい・病児の「きょうだい」への支援の必要性をマイヤー氏は説いてきた。


「40代、50代になって初めて他のきょうだいと出会うという人もいた。そんなに辛いことはない。親だったらコミュニティを自分で探せるが、子供であるきょうだい(児)にはその手段がない。親が忙しくてきょうだいが孤独になりがちな分、Sibshopで埋めたい」
(※会場通訳より)

同じ境遇の仲間を見つけたり、楽しいことや苦しいことを共有したり、 親が受ける恩恵と同じものをきょうだい(児)に提供できる場であるようにと願って、Sibshopは現在8か国475か所で行われている。


――きょうだい支援の必要性

今回マイヤー氏は、「3つのことを持ち帰っていただきたい」と次のことを冒頭で挙げられていた。

1 親の経験と「きょうだい児」の経験は似通っている
家族を支える「悩み」や「経験」は同じなのに、現在の社会的支援には親への配慮があっても、きょうだいに対してはまだまだ希薄である。

2 きょうだいの課題は一生涯である
きょうだいは障がい・病児と一番長い時間を過ごす。
さらに年代ごとに移り変わる「悩み」に常に対応していかなければならない。
親亡きあとは特に、きょうだいの役割は大きくなっていく。

3 日々の生活の中でも、障がい・病児と過ごす時間はきょうだいの方が長い

(※会場通訳より)

**********

わたしには知的障がいを抱える姉と妹がいます。

今回の講演には、深く思い当たることもあればハッとさせられるようなお話もありました。

特に「障がい・病児と一番長い時間関わるのはきょうだい児」であるということは、まさに灯台下暗し。


一般的に障がい者家族への支援というと、「障がい児」と「その親」に強くフォーカスされ、「きょうだい」の存在が無意識に外されることがあります。
その感覚は、きょうだいであるわたし自身ですら持っていました。

「病気を抱えている兄弟姉妹が一番つらいんだから」
「お父さん、お母さんは毎日大変なんだから」
「健康に生まれた自分に感謝しよう」
そんな風に感じているきょうだいは、他にも大勢いらっしゃることと思います。
逆に、親からそう教えられたり、周囲の人々からそう言われたりした経験がある方もいます。

しかし、それだけが全てだと「自分のことは後回し」という結果になってしまうのではないでしょうか?
きょうだいが持ちやすい「自己肯定感の低さ」は、このことから起因している部分もあると思います。私自身も、この言葉にしがたい感情には長年悩まされてきました。


きょうだいにはきょうだいの人生があって、自分が生きたいように生きていい。
ただ、それがわかっていても現実的に難しい環境に置かれている方もいます。


「障がい・病気を抱える兄弟姉妹と最も長い時間を過ごすのはきょうだい(児)で、1番光が当たらないといけない存在」
「故に、きょうだい支援は障がい・病児への波及的効果もある。これに投資しない手はない。」

とマイヤー氏は語られました。(※会場通訳より)



このような言葉で、きょうだいを慮る言葉を耳にしたのは初めてでした。
この「波及的効果」というワードには幅広い解釈がなされるかと思いますが、
わたしはきょうだい支援=「自分らしく生きることを応援してもらえる」ことは、「障がいを抱える姉と妹を見捨てることではない」と感じています。

(そう言うと「自己中心的」と感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、そのような自責の念を抱いてしまうこと自体が、わたしのなかのきょうだいとしての習慣から起こされる負の感情であるなら、
今ここでは、正直な言葉で表現させて頂くことをお許しください。)

そしてその支援に投資してくれる(=時間とお金をかける)存在がいらっしゃったこと。
言葉や想いだけではなく、行動で表し実現させ続けているマイヤー氏を、改めて尊敬致します。


幼少期に抱いた寂しさ=心の中の小さな自分にも、スポットが当たってもよいのだと、
安心するような思いを抱きました。



マイヤー氏がまとう優しい雰囲気はそのまま会場に広がって、終始穏やかな講演会であったと思います。 日本で最後になるかもしれない今回の講演会は本当に貴重で、大切な機会でした。

普段、きょうだい(児)についての主な情報収集がネットや本だったりしますが、実際に海の向こう側で活動されている方にお会いできたことで、より現実的に自分のきょうだいという立場を見据えることができました。

わたしの姉と妹は現在入所中ですが、親亡きあとや私自身の生活の変化に、今後どういった影響が生じてくるのか。
自分の家族との未来を健やかに歩むためにも、構えることは必要なのでしょう。

自分自身の苦しみや楽しさという気持ちに寄り添いつつ、正しい情報と公平な目を養うことも、自分の生き方には必要なことなのだと強く実感いたしました。




本講演の主催「NPO法人しぶたね」様 HP http://sibtane.com/
共催 「きょうだい支援を広める会」様 HP http://siblingjapan.org/
スペシャルオリンピックス HP http://www.son.or.jp/

2019/03/14

レビュー:「ウチの子、発達障害かも?」と思ったら最初に読む本


 

 
著者/広瀬宏之  発行所/永岡書店  価格/1,200円+税



<こんな人におすすめ>
発達障がいについて不安を抱えている
発達障がいを正しく理解したい
育児に悩む親御さん(特にお母さん)
きょうだい(児)の方



発達障がいって?

専門家ですら診断が難しい"発達障がい"を分かりやすく解説してくれた本。

福祉制度の改善によって、近年は耳にしたり、関わったりする機会が増えてきた「発達障がい」。
しかし、それを正しく理解し、説明できる方は少ないのではないでしょうか。

もしも、自分の子どもの発育に不安を感じたら――
目を通しておくだけでも、大切かもしれません。



**********

自分のこどもが「健康」に生まれてくること。
これは親となるすべての人が当たり前に抱く願望だと思います。
だからこそ「あれ?」と感じ始めた時には、不安でしょうがなくなることでしょう。

今回ご紹介するこの本は、タイトルにある通り「かも?」と思った保護者(主に母親)に向けられたものです。


個々によって症状の程度や幅が広い「発達障害」という病気がわかりやすく説明されています。
「複数の特性が混じったミックスジュース」(本文33Pより)など易しい言葉で伝えられており、医師として告知に気を配ってきた著者ならではの気遣いが伝わってきました。
挿絵にも愛嬌があり、発達障害の生々しい症状を説明するページでも可愛らしい子どものイラストで癒され、抵抗感が和らぎます。


親から寄せられた質問に著者が回答していく「Q&A方式」の実用書。
発達障害児への支援に関わって20年。3千人以上の発達障害を抱える人々と関わってきた著者の経験が並べられています。

1つの質問に対して2ページほどの回答なので、奥深く知りたい場合には少しもの足りないかもしれませんが、読者が発達障害と向き合う「最初の一歩」ならとても読みやすい本です。


特に目を引いたのは「次の子を産みたいのですが、大丈夫でしょうか?」というQ。
2人目も同じ症状を抱えるのだろうか、逆に健康に生まれてきた子(きょうだい児)は上の子との環境に戸惑いを感じないだろうか、という親の不安が表れています。
回答には、遺伝に関する具体的な数値も提示しつつ、希望も手放さない著者の分析と言葉が載せられています。悩める親達にもきちんと選択肢はあるのだということが伝わってきました。

また病気についての知識のみではなく、親戚や教員、PTAとの人間関係のアドバイスも豊富で、人付き合いの多い母親へ向けた書籍でした。
健康に生まれたきょうだい(きょうだい児)への接し方にも触れており、様々な子育ての形が提案されています。

*************


わたしがこの本を呼んだキッカケは、実の姉と妹が抱える「発達障がい」についてもっと知りたいと思ったことでした。

発達障がいは、「自閉スペクトラム症」「ADHD」「知的障がい」など様々な症状に分類されます。
しかし1人の子どもに対しそれらの症状は混在しており、一概に分類できないこともあるのです。
現に、姉と妹は「知的障がい」と診断されていますが、読後、症状を細かく観察すると「自閉症スペクトラム」も併発しているように見えます。
(20数年前の診断なので、当時は今ほど症状が細分化されていなかったからかもしれません)

きょうだいである私が思うのは、「自分の子供がもし、姉妹と同じ障がいを抱えて生まれてきたら」ということ。
遺伝の可能性については悩みがつきませんが、それでも「正しく理解する」ことは、不安やストレスを軽減させてくれます。
自分の「家族」と向き合っていたいという思いを、そっと後押ししてくれる、そんな内容でした。


永岡書店HP 書籍紹介ページ
https://www.nagaokashoten.co.jp/book/9784522436356/

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