2019/03/22

『米国きょうだい支援プロジェクト ドナルド・マイヤー氏 講演会 in OSAKA』 感想


きょうだい支援の世界的先駆者ドナルド・マイヤー氏の、おそらく日本で最後の講演会。

きょうだい(児)について研究されている方は、誰もがその名前を目にしてきたことでしょう。

特別なニーズのある子どものきょうだいのためのワークショップ「Sibshop」(シブショップ)の開発者です。


定員300名の客席はほぼ満席。
参加者はきょうだい(児)本人の方、障がい・病児をもつ親御さん、実際にきょうだい支援をされている方、また障がい者家族ではない方など様々。
TV局の取材も入り、メディアからも注目されている様子でした。

今回は「きょうだい支援の原点とこれから」と題し、 きょうだい支援の必要性や、アメリカでのきょうだい支援の歴史などお話しいただきました。

本記事ではそのごく一部のみ、ご覧いただいている皆様と共有させていただきます。
(※一部抜粋であり、講演会に参加されていない方には解釈しづらい点があるかもしれません。)


**********

――アメリカのきょうだい支援

アメリカでのきょうだい支援の啓発活動はおよそ100年前まで遡る。

その長い歴史の中、 故ジョン・F・ケネディ米大統領の実妹・ローズマリー・ケネディが知的障がいを患っていたのは有名な話だ。
日本にも普及したアメリカ発祥の「スペシャルオリンピックス(知的発達障害のある人の自立や社会参加を目的としたスポーツ組織)」は、そもそもケネディの別の妹・ユーニス・ケネディ・シュライバーが知的発達障害のある人たちを招いて、自宅でデイキャンプを行ったのが始まりだった。
ケネディの他の兄弟姉妹たちには「悪名高い障がい者収容施設の廃止」「障がい者のための制度の改善」などの功績がある。
ケネディ兄弟姉妹がアメリカの福祉分野に与えた影響は大きく、それがのちのきょうだい支援にも繋がっている。

他にも10代のための「シブティーン」
20代のきょうだいのための「シブトゥウェンティ」
国が支援する「シブリングリーダーシップネットワーク」など、
様々な支援団体がその活動の幅を広げてきた。
アメリカではきょうだい支援の充実に向けて、国会議員へ積極的なアプローチも続けている。

マイヤー氏の「Sibshop(シブショップ)」は、もともとは「障がい・病児をもつ父親の会」として、同志と立ち上げた組織がきっかけであった。
様々な家族とふれあい情報共有することで、障がい・病児の「きょうだい」への支援の必要性をマイヤー氏は説いてきた。


「40代、50代になって初めて他のきょうだいと出会うという人もいた。そんなに辛いことはない。親だったらコミュニティを自分で探せるが、子供であるきょうだい(児)にはその手段がない。親が忙しくてきょうだいが孤独になりがちな分、Sibshopで埋めたい」
(※会場通訳より)

同じ境遇の仲間を見つけたり、楽しいことや苦しいことを共有したり、 親が受ける恩恵と同じものをきょうだい(児)に提供できる場であるようにと願って、Sibshopは現在8か国475か所で行われている。


――きょうだい支援の必要性

今回マイヤー氏は、「3つのことを持ち帰っていただきたい」と次のことを冒頭で挙げられていた。

1 親の経験と「きょうだい児」の経験は似通っている
家族を支える「悩み」や「経験」は同じなのに、現在の社会的支援には親への配慮があっても、きょうだいに対してはまだまだ希薄である。

2 きょうだいの課題は一生涯である
きょうだいは障がい・病児と一番長い時間を過ごす。
さらに年代ごとに移り変わる「悩み」に常に対応していかなければならない。
親亡きあとは特に、きょうだいの役割は大きくなっていく。

3 日々の生活の中でも、障がい・病児と過ごす時間はきょうだいの方が長い

(※会場通訳より)

**********

わたしには知的障がいを抱える姉と妹がいます。

今回の講演には、深く思い当たることもあればハッとさせられるようなお話もありました。

特に「障がい・病児と一番長い時間関わるのはきょうだい児」であるということは、まさに灯台下暗し。


一般的に障がい者家族への支援というと、「障がい児」と「その親」に強くフォーカスされ、「きょうだい」の存在が無意識に外されることがあります。
その感覚は、きょうだいであるわたし自身ですら持っていました。

「病気を抱えている兄弟姉妹が一番つらいんだから」
「お父さん、お母さんは毎日大変なんだから」
「健康に生まれた自分に感謝しよう」
そんな風に感じているきょうだいは、他にも大勢いらっしゃることと思います。
逆に、親からそう教えられたり、周囲の人々からそう言われたりした経験がある方もいます。

しかし、それだけが全てだと「自分のことは後回し」という結果になってしまうのではないでしょうか?
きょうだいが持ちやすい「自己肯定感の低さ」は、このことから起因している部分もあると思います。私自身も、この言葉にしがたい感情には長年悩まされてきました。


きょうだいにはきょうだいの人生があって、自分が生きたいように生きていい。
ただ、それがわかっていても現実的に難しい環境に置かれている方もいます。


「障がい・病気を抱える兄弟姉妹と最も長い時間を過ごすのはきょうだい(児)で、1番光が当たらないといけない存在」
「故に、きょうだい支援は障がい・病児への波及的効果もある。これに投資しない手はない。」

とマイヤー氏は語られました。(※会場通訳より)



このような言葉で、きょうだいを慮る言葉を耳にしたのは初めてでした。
この「波及的効果」というワードには幅広い解釈がなされるかと思いますが、
わたしはきょうだい支援=「自分らしく生きることを応援してもらえる」ことは、「障がいを抱える姉と妹を見捨てることではない」と感じています。

(そう言うと「自己中心的」と感じられる方もいらっしゃるかと思いますが、そのような自責の念を抱いてしまうこと自体が、わたしのなかのきょうだいとしての習慣から起こされる負の感情であるなら、
今ここでは、正直な言葉で表現させて頂くことをお許しください。)

そしてその支援に投資してくれる(=時間とお金をかける)存在がいらっしゃったこと。
言葉や想いだけではなく、行動で表し実現させ続けているマイヤー氏を、改めて尊敬致します。


幼少期に抱いた寂しさ=心の中の小さな自分にも、スポットが当たってもよいのだと、
安心するような思いを抱きました。



マイヤー氏がまとう優しい雰囲気はそのまま会場に広がって、終始穏やかな講演会であったと思います。 日本で最後になるかもしれない今回の講演会は本当に貴重で、大切な機会でした。

普段、きょうだい(児)についての主な情報収集がネットや本だったりしますが、実際に海の向こう側で活動されている方にお会いできたことで、より現実的に自分のきょうだいという立場を見据えることができました。

わたしの姉と妹は現在入所中ですが、親亡きあとや私自身の生活の変化に、今後どういった影響が生じてくるのか。
自分の家族との未来を健やかに歩むためにも、構えることは必要なのでしょう。

自分自身の苦しみや楽しさという気持ちに寄り添いつつ、正しい情報と公平な目を養うことも、自分の生き方には必要なことなのだと強く実感いたしました。




本講演の主催「NPO法人しぶたね」様 HP http://sibtane.com/
共催 「きょうだい支援を広める会」様 HP http://siblingjapan.org/
スペシャルオリンピックス HP http://www.son.or.jp/

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