著者/中澤晴野 発行所/株式会社文芸社 価格/1,000円+税
<こんな人におすすめ>
✅きょうだい児としての悩みを共有したい
✅障がい者家族を支援したい、している
きょうだい児としての「告発本」
「障がい者本人も苦しんでいる」「親は十分努力している」
その事実の裏側にある「きょうだい児の葛藤」が吐露されていました。
その事実の裏側にある「きょうだい児の葛藤」が吐露されていました。
支援の手からこぼれ落ちてしまう「きょうだい(児)」の存在を、改めて思い出させてくれました。
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筆者は現在、ダウン症を抱える弟「Aちゃん」と両親とともに暮らしています。
Aちゃんが生まれてから現在に至るまでの生活が、筆者視点で記されています。
両親との確執、学校でのいじめ、本人に発症した病。
さまざまな問題に見舞われながら、筆者自身の人生が「透明な鎖」でがんじがらめに縛られていく様子が伝わってきました。
幼少期から刷り込まれてきた「バイプレイヤー=脇役」気質。
その根源が、筆者の経験を通して丁寧に触れられています。
また、「いろいろなきょうだい児」(本書P83より)と題して、家庭環境の違いから生じるきょうだい(児)の多様性も認めていらっしゃるので、公平な目で読み進めることができました。
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まずは、きょうだい児の葛藤をよくぞここまでストレートに発信してくださった、と敬意を表します。
私も筆者と同じく、障がい(知的障がい)を抱える姉と妹を持つ「きょうだい(児)」です。
共感と納得ができる部分が多々あり、筆者が受けた理不尽な出来事の連続には思わず涙しそうになりました。
それは悲しみの涙ではなく、わたしの中にもあるきょうだい(児)特有の「寂しさ」が胸を打ったのです。
筆者は本書を「告発本」と表しています。
確かに、家族への仄暗い感情や、家庭内の不和を赤裸々に語る点ではそのように言えるかもしれません。
ですが、筆者は本書で
「この告発が誰かにとっての受容と共感となってくれることを願っている。(本書)P83 より)」
と話しています。
「きょうだい児」という言葉を私が初めて知ったのは、SNSでした。
「#(ハッシュタグ)きょうだい児」には、様々な環境を過ごすきょうだいたちの「リアルな声」が刻まれています。
きょうだい児は親と違い、同じ境遇の仲間をみつける手段が子供のころには持てません。
「ネガティブ」な感情、またそれを抱えることへの「罪悪感」。それすらも共有できる場はまだまだ少ないです。
同じ考えを持っている仲間と出会えることは、たとえ顔が見えないネット上であっても心強いものです。
本書はそのネットの世界から飛び出して、「出版」という、より大きな声で発信された勇気の塊だと感じました。
きょうだいとしての悩み、葛藤、不安。
ネガティブな気持ちは抱えてはいけないものではない。
むしろそれに気づかないふりをして、自分を殺してしまうことの方が、私はよほど恐ろしいものに思えます。
もし人知れず、きょうだいとしての境遇にもやもやした気持ちや心の傷を抱えている方がいらっしゃったら、
本書をご覧いただいてその気持ちが共有できれば、他者を知る=自己を顧みる機会になるのではないかと思います。
また、障がい者家族を支援されている方、これからされる方。
きょうだいへの理解なくして、一家族への支援は成り立ちません。
すべてのきょうだいが本書と同じ経験を経ているわけではありませんが、ぜひ知ってほしい。
そんな私の個人的な感想より、<こんな人におすすめ>に入れさせていただきました。
最後に
他人事のような言葉しか送れないことが口惜しいですが、
今もなお苦しい日々と戦う筆者の人生に、すこしでも光が射すことを願うばかりです。
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