2019/04/08

レビュー:障害のある人とそのきょうだいの物語 青年期のホンネ


編著/近藤直子、田倉さやか、日本福祉大学きょうだいの会
発行所/株式会社クリエイツかもがわ 
価格/1000円+税

<こんな人におすすめ>
きょうだい(児)について知りたい方
福祉関連にご興味お持ちの方




学生であるきょうだい(児)の”文集”
 
日本福祉大学のゼミ生が結成した「きょうだいの話を聞く会」
参加者のほとんどが障害を抱える兄弟姉妹を持つ“きょうだい”です。
 
会立ち上げの経緯や、集った青年たちの「きょうだい児」としての本音が寄せられています。



***************


兄弟姉妹に対する思いは様々で、愛情たっぷりのエピソードを紹介する学生もいれば、昔は憎しみすら抱いていたと赤裸々な思いを語る学生もいました。

中でも沼野純子さん執筆のエピソード「兄の存在」には、きょうだい特有の“孤独”との葛藤が包み隠さず描かれていることに衝撃を受けます。


地元の同級生たちからの揶揄によるストレスで、自閉症の兄へ暴力を振るってしまっていたこと。
それに対する両親からの叱責により居場所を失っていく孤独感。

経験したことがなくても、読み手の心が詰まるような“告白本”のようでした。

ただ、そんな状況から脱却する為に、あえて地元から離れた高校を受験し自ら環境をリセットした勇気や、

孤独な経験を生かし同じ境遇の子達へ手を差し伸べるべく“特別支援学校の教員”という夢を見つけたこと、

更には親との関係も修復し、自閉症の兄の苦労を改めて知り涙したことなど、人として成長していく沼尾さんの心の変化に感動しました。



きょうだい児の”葛藤”や”希望”が込められた1冊です。
エピソードのバリエーションの豊かさから、「きょうだい(児)」というテーマを考える際の未来に残したいと思える書籍でした。

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